「終活」と聞くとリタイア後に取りかかるイメージが多いかもしれません。しかし、実際には20代や30代から終活に取りかかっている人もいます。早くから終活を行うことで、自分の現状を把握できるほか、今後の生き方についての考えがまとまるといったメリットがあるからです。
さらに、終活を行うことで、今後どのような資金が必要か、そのためにはどのような資産形成方法を取り入れたらいいかを考えることにも結びつきます。
今回は終活について解説するとともに、終活を行うことで得られるメリットや、終活の手順について紹介します。年代別に考えるべき項目についても紹介していますので、終活を行う際の参考にしてください。
目次
終活とは、一言でいうと「自分の人生の終わりをどのようにしたいかについて考えたり、準備をする活動」のことで、終活の内容はその人の年齢や置かれている立場によって異なります。
具体的な活動としては、人生の終わりを見据えて身の回りの不要なものを片付けたり、自分が亡くなった後の財産をどのようにしたいかなどを考える活動が当てはまります。
もちろん、終活は必ずやらなければならない活動ではありませんが、最近では終活を行うことの重要性に気づき、取り組む人が増えています。
終活には、
といったメリットがあります。
ここではそれぞれのメリットの内容について解説します。
自分が亡くなった後には、葬儀の手配や遺産相続、場合によっては遺産分割協議などの手続きに追われます。また、相続によって相続税が発生する場合は、決められた期限までに相続税を申告し、納税しなければなりません。
相続時には、亡くなった人の財産がどのくらいあるのかを把握する必要がありますが、どこにどのくらいの財産があるのかを把握するためには、法的な手続きを行わなければいけなくなる場合もあり、時間がかかります。
しかし、終活によってその内容をエンディングノートなどに明記しておけば、残された家族はどのくらいの財産があるのかを調べる手間が省けます。
また、どのような葬儀を行ってほしいのか、亡くなったときに知らせるべき人がいるのかなどがエンディングノートに記されていれば、迅速に行動できるでしょう。
相続が発生した際には、被相続人の遺産が分割されますが、その内容に納得しない相続人がでてくることも珍しくありません。
特に相続の際には負の資産(ローンなど)も相続する必要があるため、残された財産の内容によっては相続放棄を考える人もでてくるでしょう。
複数人で遺産を相続する場合には、相続人全員でどのように遺産を分けるのかを話し合う遺産分割協議が必要ですが、明確な故人の意思が分かるものがあれば、その内容にできるだけ沿った形での話し合いが可能です。
もちろん、終活を行うなかで遺言書の必要性を感じたなら、早めに遺言書の作成にも取りかかるようにしましょう。
終活は自分の人生の終わりのことだけを考える活動ではありません。
老後に介護が必要になったときにはどのようにしてもらいたいか、また認知症になったときなどの対応についても考える必要があります。あわせて、介護にかかる費用のことも考えなければなりません。
終活を行うことで、老後に対する漠然とした不安を明確にでき、さらに家族と話し合うことで不安を解決できるというメリットもあります。
あまり先のことを考えても意味がないと思うかもしれませんが、自分が置かれている状況は日々変化するため、今の時点でどう思っているかを伝え、話し合うことが大切です。
では、終活を行うにはどのような準備が必要なのでしょうか。
ここでは終活の準備のために必要なステップを4つに分けて解説します。
まず一番に取り組むのが、エンディングノート(終活ノート)の活用です。
エンディングノートとは、自分が亡くなったときに残された家族に伝えたいことをまとめておくノートのことです。エンディングノートを残しておくことで、残された家族の負担を軽減できます。
エンディングノートには、自分の生い立ちや自分が保有している資産の詳細のほか、どのような葬儀をしてほしいか、葬儀の際に知らせてほしい人などの情報を書き留めます。また、遺産をどのように分けてもらいたいかといった内容や、介護状態になった際に希望する対応なども記すことができます。
今自分が持っているものの内容を洗い出すことで、必要なものか不要なものかを判断できます。不要だと判断したものは処分してしまいましょう。
いつか使うだろうと思っていて、そのまま何年も眠っているものはありませんか?不要なものを置くスペースも無駄になりますので、思い切って処分する気持ちを持つことも大切です。
エンディングノートは自分が亡くなった場合のために用意しておくものと紹介しましたが、生前の意思表示にも活用できます。自分が病気になった際に延命治療を受けたいのか、また、認知症を発症した際には家族に迷惑をかけることを避け、介護施設に入りたいのかなどの希望をまとめておきましょう。
もちろん、家族と話し合ってもいいですし、話し合う機会がなければ自分の思いをエンディングノートに記しても構いません。
自分が亡くなった後の葬儀の手配や、相続手続き、またお墓の準備など必要な手続きがスムーズに行えるよう、情報をまとめておきましょう。
特にお葬式に呼んでもらいたい人のリストなどは、本人でなければ分かりませんので、きちんと分かるようにしておく必要があります。
遺産分割についてトラブルになりそうだと感じたなら、エンディングノートだけでなく、法的な効力を持つ遺言書の作成にも取りかかるようにしましょう。
先程紹介した4つのステップを基に、具体的に行うことを8つ紹介します。
エンディングノートは本屋で購入できるほか、インターネットでも購入できます。エンディングノートにはさまざまな種類があるため、自分にとって使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
エンディングノートの内容や書き方に決まりはありませんが、初めて準備するなら市販のものやインターネット上のテンプレートの利用をおすすめします。
エンディングノートは遺言書と異なり、法的な効力はありませんが、エンディングノートに自分の思いを綴っておくことで、遺産相続のトラブルを少なくできる可能性があります。
また、エンディングノートは1度記載したら終わりではありません。考え方が変わることもありますし、資産の状況が変化することも考えられますので、定期的に見直し、常に最新の情報にしておきましょう。
身の回りの不要なものは、まとめて処分しましょう。もらってくれる人がいれば譲ってもいいですし、売れそうなものがあれば買い取ってもらうこともできます。
自分が保有している財産の一覧を作成しておきましょう。預貯金や株式なら、どの金融機関にいくらあるのかまで詳細に記載しておく必要があります。不動産を保有している場合は、登記簿の保管場所を記載しておきましょう。
加入している保険がある場合には、内容が分かるものも準備しておくとともに、必要に応じて見直しを行っておくと良いでしょう。
財産には借金も含まれますので、まだ残っているローンがあるなら、その詳細も記載しておかなければなりません。
また、財産の一覧を作成するうえで忘れてはならないのが各金融機関の口座の暗証番号などの情報です。
特に最近はネット銀行やネット証券の利用が増えており、ログインIDやパスワードが必要になります。亡くなった後にログインができないと、手続きができず、残された家族が困ることになってしまうため、一覧でまとめておくことをおすすめします。
その際には、金融機関の情報だけでなく、利用しているメールアドレスや、普段利用しているパソコン内に保存しているデータの取り扱いについても記載しておきましょう。
これらのデジタル終活は非常に大切な問題ですので、忘れずに行うようにしてください。
介護が必要になったときに、どのようにしたいか。また、医療の方針について明確にしておくことも大切です。
特に高齢になると意思の疎通がなかなかできにくくなるため、自分の判断能力があるうちに自分の考えを明確にしておくようにしましょう。もし、認知症になった後が不安なら、家族信託の利用も有効です。
葬儀にはさまざまな種類があります。一般葬を希望するのか、家族葬を希望するのか、また直葬・火葬式や一日葬などを希望するならその旨をきちんと明記しておきましょう。あわせて、葬儀に呼んでほしい人とその連絡先も記載しておくと、手続きがスムーズに行えます。
お墓についても、最近は従来のような家のお墓ではなく、樹木葬や納骨堂を考える人が増えています。自分が希望するお墓についても考えておくようにしましょう。
自分が保有している資産総額と相続人の数によっては相続税が発生する可能性があります。相続税は相続した人が現金で支払わなければならないため、相続人に迷惑をかけたくないなら、相続対策も考えておかなければなりません。
終身保険を活用した相続対策も有効ですので、必要であれば検討してみましょう。
エンディングノートには遺言書と違い法的効力はありません。そのため、遺産相続トラブルを防ぎたいなら、遺言書を作成するのも一つの方法です。
遺言書には「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。特に自分で作成する自筆証書遺言は、法律で決められた方式で作成していないと無効になってしまうため、注意が必要です。
エンディングノートを作成したら、その保管場所を家族に伝えておくようにしましょう。
また、一人暮らしでペットを飼っているなら、ペットの扱いをどうするかも考えておかなければなりません。最近では、ペットの世話を引き受けることを条件に、財産を相続する「負担付死因贈与契約」も増えています。
遺族にできるだけ負担をかけたくないなら、死後事務委任契約や任意後見契約、見守り契約など、外部の人間に任せる方法を取り入れることをおすすめします。
終活を始めるにあたって、何歳から始めるといった基準はありません。終活を始めたいと思ったときが始めどきといえるでしょう。
早くから終活に取りかかることで、これから起こるライフイベントに合わせた資金計画も立てられるというメリットが得られます。
ここでは、年代別に終活において行うべきことについて紹介します。
20代・30代の終活では、普段から身の回りの整理を行うことを心がけましょう。不要なものはできるだけ持たないことや、結婚する人も多い年代のため、配偶者や子どものためにも整理しておくことが大切です。将来に向けての資産形成も検討できるきっかけとなるでしょう。
また、現在ではアプリを利用してパソコンやスマートフォン1つで多くのことが管理できます。しかし、アプリの利用にはログインIDやパスワードが必要で、利用しているアプリが多いほど、IDやパスワードの管理が大変になります。とくにインターネットバンキングやネット証券の利用が増えている今、デジタル終活は大きな問題となりつつあります。
デジタルデータはUSBメモリなどでバックアップを取っておくほか、必要に応じて整理しておきましょう。
ログインが必要なアプリやSNSについては、ログインIDやパスワードをエンディングノートに書き留めて管理しておくことをおすすめします。
そして、万一のことに備え、緊急時の連絡先や、延命措置、ドナーの希望についてもエンディングノートに記載しておきましょう。
40代になると、自分の健康に不安を感じるようになります。あわせて親もリタイアしセカンドライフを楽しむ年齢にもなってくる人も多いでしょう。40代で終活に取り組むことにより、親の終活についても話し合うきっかけが作れます。
40代からの終活においては、保有資産の見直しや、老後資金の準備を始めることも考えてみてもいいかもしれません。
50代では、自分の体力や判断能力があるうちから終活を始めることがポイントです。自分の人生の終わりを考え、葬儀や相続、お墓などの希望をエンディングノートに書き留めておきましょう。
特におひとりさま(独身の人)は、死後事務委任契約なども検討しておくとよいでしょう。
60代での終活では、断捨離を念頭に身辺整理を行いましょう。また、60代はリタイア時期でもあるため、セカンドライフをどのように過ごすかを考えるきっかけにもなります。
現在保有している資産や、公的年金の収入などから、どのような暮らしが送れるかを考えるとともに、介護にかかる費用や医療費なども確保しておくことも心がけましょう。
終活は自分の人生を見直すきっかけになり、その後の人生を有意義に生きるための準備でもあります。
終活はリタイア後から始めると考えている人も多いですが、もっと早くから始めることで得られるメリットもあります。
終活の意味や、やるべきことを理解したうえで、自分に合った終活を行うことを考えてみましょう。
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー
トータルマネーコンサルタントとして、個人向け相談や、資産運用などにまつわるセミナー講師のほか、大手金融メディアへの執筆および監修に携わっている。現在年間300本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績 は2,500本を超える。
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