医療保険を検討しているけれど、種類が多くて選ぶことが難しいと感じていませんか?医療保険に加入する際には、混同しやすい公的医療保険と民間の医療保険のそれぞれの内容や役割を理解しておくことが必要です。この記事では、医療保険の種類や必要性についてわかりやすく解説しています。医療保険への加入を検討している人は参考にしてください。
※当コラム内で言及している保険に関して、マニュライフ生命ではお取り扱いのない内容の商品もあります。また、取扱保険会社によって、お取り扱い商品が異なる場合があります。
目次
医療保険には公的医療保険と民間の医療保険があります。両者の役割の違いや位置づけについて今一度整理してみましょう。
簡単に説明すると、医療保険とは、病気やケガをしたときにかかる医療費の負担を軽減する制度や、商品全般のことをいいます。
医療保険は大きく、公的医療保険と民間の医療保険の2種類に分けられ、公的医療保険は社会保険制度の1つに位置づけられます。一方、民間の医療保険は、相互扶助の精神に基づき、多くの加入者がお金を出し合い、病気やケガの治療などで生じた経済的負担を補填する仕組みです。
公的医療保険は給付の要件や金額、自己負担割合が決まっているため、場合によっては病気やケガの治療によって生じた医療費が、大きな負担となることがあります。民間の医療保険は、こうした公的医療保険の不足分を補完する目的で加入することが一般的です。
日本の社会保障制度は、「社会保険」「公的扶助」「社会福祉」「保健医療・公衆衛生」の4つの柱からなり、公的医療保険制度は、社会保障制度のうち、社会保険に含まれます。社会保険制度と、公的医療保険の関係をわかりやすく整理してみましょう。
社会保険制度は「広義の社会保険」「狭義の社会保険」にわけられています。狭義の社会保険とは公的医療保険・年金保険・介護保険が該当し、これに労働保険(雇用保険と労災保険)を加えたものが広義の社会保険になります。
厚生労働省は、公的医療保険について「国民皆保険制度を通じて、世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現するもの」と定義しています。国民皆保険とは、すべての国民が加入すること、つまり原則、強制加入です。
これに対し、民間の医療保険は保険会社が運営しており、必要に応じて任意で加入します。
公的医療保険は種類があり、運営主体によって5つに分類されます。まず大きく、被用者保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度の 3つに分類され、さらに被用者保険は、健康保険組合、共済組合、協会けんぽの3つにわけられます。
*1 被用者とは雇われている労働者をいいます。退職後も一定の条件により任意継続できる場合があります。
被用者保険とは、雇用される従業員とその扶養家族が加入する健康保険制度です。自営業やパート・アルバイトの方など被用者保険に加入していない、原則75歳未満のすべての人は 国民健康保険に加入します。また、原則75歳以上の方は、後期高齢者医療制度に加入することになります。
なお被用者保険に加入していた人は、退職後は75歳までは国民健康保険に加入するか、家族の健康保険に加入するなどの選択肢があります。
被用者保険は、中小企業の被用者と扶養家族を対象とした協会けんぽと、大企業の被保険者と扶養家族を対象とした健康保険組合、公務員や教職員等とその扶養家族を対象とした共済組合の3つに分類されます。
公的医療保険は国民皆保険であることから、病気やケガをしても一定の保障は受けられます。そう考えると、生命保険会社が扱っている民間の医療保険は必要か疑問に思うかもしれません。そこで、任意加入である民間の医療保険の必要性について考えてみましょう。
公的医療保険に加入していれば、原則として医療費の負担は1~3割になります。また、医療費の負担が高額になったとしても、高額療養費制度がある他、自治体によっては助成金が用意されていることもあります。そう考えると、仮に公的医療保険ですべての医療費をカバーできなかったとしても、貯蓄で賄えるので民間の医療保険は不要と考える人もいるでしょう。
しかし、万一のことが起こる時期は選べません。一時的に貯蓄が不足している時期や、教育費や住宅ローンの返済が重なっている時期など、支出が多い時期に多額の医療費がかかる可能性についても考慮しておく必要があります。
希望して個室に入院した場合の差額ベッド代や、先進医療にかかる技術料、入院時の食事負担や交通費など、公的医療保険の対象外になる費用があります。そのため公的医療保険でまかなえない費用のために、治療の選択肢が限られてしまうかもしれません。
自営業が加入する国民健康保険は、傷病手当金がありません。傷病手当金とは、病気やケガで働けず、事業主から十分な報酬を受けられないときに支給される手当金のことです。自営業は傷病手当金がないことから、病気やケガで働けなくなったときの備えを、被用者以上に準備する必要性が高いといえるでしょう。
生命保険文化センターの調査によると、直近の入院時の自己負担費用の平均は19.8万円です。これは、食事代、差額ベッド代など公的医療保険の対象外となる費用も含まれた金額ですが、高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額のため、高額療養費制度を利用したとしても自己負担が生じる可能性があることがわかります。
*2 治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額
※集計ベース:過去5年間に入院し、自己負担費用を支払った人(高額療養費制度を利用した人+利用しなかった人(適用外含む))
民間の生命保険会社や郵便局、JA(農協)、県民共済・生協等で取り扱っている生命保険(個人年金保険や生命共済を含む)のうち、疾病入院給付金が支払われる生命保険の加入率は65.7%となっており、多くの人が病気やケガなど万一のことがあったときの安心を重視していることがわかります。
民間の医療保険に加入するとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
公的医療保険では適用対象外となる差額ベッド代や先進医療の技術代なども、民間の医療保険では特約を付加することなどで補うことができます。民間の医療保険は希望に合わせて保障範囲の拡大や、保険金額を設定できる点がメリットといえるでしょう。
また民間の医療保険の保険料のうち、入院・通院にともなう給付部分にかかる保険料は生命保険料控除の中の、「介護医療保険料控除」の対象*3(40,000円を上限)となります。
*3 身体の傷害のみに基因して保険金が支払われる保険契約にかかる傷害特約や災害割増特約などの保険料は、2012年(平成24年)以降の契約では生命保険料控除の対象になりません。
民間の医療保険加入のデメリットとして主に2つ挙げられます。1つは民間の医療保険に加入するためには、保険会社に保険料を払い込む必要があります。より手厚く保障を準備できますが、公的医療保険の国民健康保険料などとは別で、その分の保険料の負担が発生します。もう1つは、保険種類によってもさまざまですが、医療保険に加入する際には診査があるため、一般的に病気になってからでは加入しにくくなる、保障されない部位がある、保険料が高くなるなどの可能性があることです。ご加入を検討する際に参考にしておくといいでしょう。
民間の医療保険は、保障内容を理解して自分の目的にあったものを選びましょう。医療保険を選ぶポイントを紹介します。
多くの医療保険は、病気やケガで入院した場合に1入院あたり定額の給付金が支払われる「入院給付金」と、手術でかかった費用を保障する「手術給付金」の保障があります。万一のことがあった場合に、入院給付金と手術給付金の保障額が十分な内容か確認することが大切です。また商品によって保障内容は異なるため、保障額のみでなく保障内容もあわせて確認しておきましょう。
医療保険の入院給付金は、日帰り入院から保障されるものや、数日間入院をしないと支払われないものがあります。入院何日目から入院給付金の支払対象となるか確認をしておきましょう。また、1入院で何日まで入院給付金が支払われるかを表す「入院支払限度日数」も確認しておくべき項目です。長期入院が必要な病気やケガの場合、入院支払限度日数が少ないと十分な給付金が受け取れなくなる可能性があります。
民間の医療保険は、入院や手術の保障以外にも必要に応じて特約を付加することで保障を拡充できます。
医療保険には、保険期間が決まっている「定期型」の医療保険と、保障が一生涯継続する「終身型」の医療保険があります。「定期型」の場合は、10年間などの保険期間が定められており、その期間ごとに契約が更新されるため、見直しができます。一般的に、保険料は更新するたびに高くなります。「終身型」の場合は、一生涯にわたり保障が続き、原則、保険料は契約時から変わりません。自分にとって、いつ重点的に保障を備えておく必要があるか、老後も医療保険は必要かどうかなど長期的な視点で医療保険を検討していく必要があるでしょう。
また保険期間と保険料払込期間は別々に設定できる場合があります。例えば、医療保障は一生涯準備しておきたいけれど支払いは定年退職までに終えたいなど、保険料払込期間も確認が必要です。
医療保険には公的医療保険と民間の医療保険があり、民間の医療保険は、公的医療保険を補う目的で加入します。そのため、民間の医療保険に加入する場合は、公的医療保険の内容についても理解しておく必要があります。公的医療保険の内容を踏まえて、自分にあった医療保険を見つけたい人はプロに相談してみても良いでしょう。
CFP
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
※記載内容および税務上のお取り扱いについては、2024年8月現在の内容であり、今後、税制の変更などによりお取り扱いが変更となる場合がありますのでご注意ください。また、個別の税務などの詳細については税務署や税理士など、専門家にご確認ください。
※このコラムの内容は各商品・制度の情報提供を目的としたものです。一般的な説明であり、特定の商品を説明・推奨・勧誘するものではありません。取扱会社などによって、お取り扱いが異なる場合がありますので、各資料などをご確認いただき、ご意向に沿ったものをご検討ください。
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